税務最新情報
2015年05月01日号 (第257)
出国時課税制度
みなさん、こんにちは、ゴールデンウイークが始まりました。5月3日の振替休日が6日の水曜日になるのですね。油断していると出勤してしまいそうな日程です。
ゴールデンウイークで海外に行かれる方も多くいらっしゃいますが、今回は、出国時課税制度という海外へ移住する際に、課税される仕組みについてご紹介します。
出国時課税制度が必要になった理由
租税条約では、株式など有価証券の売却益については、有価証券を売却した者が居住している国に課税権があるとされています。しかし、シンガポールや香港などでは、有価証券の売却による利益については非課税とすることで、世界中から富裕層が移住しやすいような政策をとっています。
多額の含み益のある有価証券を保有している日本人が、国内でその含み益のある有価証券を売却した場合には、多額の税金がかかることが予測できます。この場合に、シンガポールへ移住してから、含み益のある有価証券を売却することで、有価証券の売却益に対する課税を逃れることが可能となっています。このような、国際的な租税回避を防止することを趣旨として、平成27年度税制改正で導入されました。
制度の概要
国外転出をする居住者が、有価証券などを有する場合に、その国外転出の時に、その有価証券などを売却したものとして、所得税の課税が行われることになります。
なお、具体的な計算方法については、納税管理人がいる場合といない場合では、以下のとおり異なる内容になります。
(1) 納税管理人がいる場合
国外転出時の有価証券等の時価 - 有価証券等の取得費 = みなし譲渡所得 |
(2) 納税管理人を定めない場合
国外転出予定の3ヶ月前の日における有価証券の時価 - 有価証券の取得費 = みなし譲渡所得 |
この相違は、納税管理人を定めない場合は、出国時までに確定申告をする必要があることから、国外転出の予定日の3月前の時価を用いることになっているためです。
なお、有価証券だけではなく、未決済デリバティブ取引についても、決済をしたものとみなした利益について、課税される仕組みになっています。
なお、本制度は平成27年7月1日以降から適用開始となります。
出国時課税制度の適用対象者
出国時課税制度は、富裕層の国外転出による国際的な租税回避を防止することを目的としており、対象となるのは下記の要件を満たす場合です。
(1) 資産規模要件
国外転出時の有価証券の時価と未決済デリバティブ取引等の利益の額又は損失の額が1億円以上である者(納税管理人を定めない場合は国外転出予定日の3ヶ月前の時価で判定) |
(2) 在住期間要件
|
贈与、相続があった場合の取扱い
なお、上記の適用対象者が、有価証券等を贈与、相続、遺贈により非居住者に移転した場合は、適用対象者が国外に転出してから、贈与、相続、遺贈した場合と同様の結果になるので、贈与、相続、遺贈があったときにも時価で売却したものと、みなして課税される仕組みとなっています。
贈与、相続の場合も平成27年7月1日以降から適用されることになっており、駆け込みで6月までに贈与を行うなどの対策が行われているようです。
- 記事提供
-
- TIS税理士法人 税理士 飯田 聡一郎 ホームページ
- TEL: 03-5363-5958 / FAX: 03-5363-5449 / メールでのお問い合せ