税務最新情報

2014年09月01日号 (第234)

保険料の取扱いについて(1)

 みなさん、こんにちは、9月になりました。時間が経つのが本当に早く感じます。残暑に負けないように頑張っていきましょう。
 新聞の記事によれば、赤字法人の割合が8割を占め、法人税の負担より社会保険料の負担の方が重い時代なのだそうです。確かに、法人税は節税可能ですが、社会保険料は賞与の比重を極端に高くするなど特殊な方法を使わないと、節約できません。
 今回から数回に分けて、節税の手法でよく用いられる保険料の取扱いについてご紹介していきます。

保険料が節税になる理由

 よく保険会社の営業の人から、節税の手法として保険契約を奨められます。なぜ、保険契約が節税の手段としてよく用いられるのかというと、支払った保険料のうち費用として処理される額が、利益を圧縮し、結果として法人税を節約する効果があるということです。
 税率が30%であれば、全額費用扱いできる1000の保険料を支払っても、節税効果は300ですから、持ち出しが増えてしまいます。しかし、保険の種類によっては、それなりの解約返戻金が期待できるので、解約返戻金を考慮すると、貯金をしつつ、法人税も安くできるというような、節税の仕組みができあがります。

保険節税の落とし穴

 保険は節税に利用できることは、事実です。しかし、思い通りにならないというケースもしばしば登場します。
 保険節税は、保険料の支払時に節税効果がありますが、解約返戻金を受け取れば法人税が課税されるので、出口対策が重要になります。多くの場合は、役員退職金の支払いが想定される時期に、解約返戻金のピークを合わせて、受け取る解約返戻金は収益になるけれども、役員退職金としてそれ以上の額を支払うことで、法人税の負担が実質ないような形をとります。退職金については、所得税が優遇されるので、トータルではかなりの節税が期待できます。
 予定通り事が運べばうまく節税として機能するのですが、保険の契約時期から退職金の支払時期まで相当長期間である場合には、業績の悪化などで、保険料を払い続けることができずに解約せざるを得ないということも考えられます。短期間で解約すると、ほとんど解約返戻金が受け取れない場合などもあり、計画通りに進まない場合には、節税どころか、損をしてしまうこともあります。多くの会社を見てきましたが、10年間ずっと業績が良い会社というのは、極めて少数です。10年以上、保険料を払い続けるのが保険料節税ですから、予定通りに事が進まないということも想定して実行する必要があります。

保険の種類によって取扱いが異なる点に注意

 保険料を払えば、費用になるかというと、保険の種類によって、異なる取扱いとなります。一般的には、解約返戻金がない、掛け捨てタイプの保険であれば費用として取り扱われます。一方で、貯蓄性の高い保険、具体的には終身保険や養老保険などについては、保険料を支払っても資産計上を行うというのが基本的な取扱いとなります。
 養老保険については、役員や従業員を被保険者とし、死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人を法人とすることで2分の1を損金にできるとか、本来は費用処理できるはずの定期保険が、契約形態によっては、一部を資産計上しなければいけないなど、保険料に関する税務の取扱いは複雑です。
 保険に対する税務を説明する前に、保険の種類を説明する必要がありますので、次回は、保険の種類についてご紹介していきます。

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