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2013年04月22日号 (第187)

消費税増税と住宅減税の微妙な関係

 みなさん、こんにちは、税理士の飯田聡一郎です。最近、不動産の動きが活発だと複数の不動産屋さんから聞きました。消費税増税前に住宅の建築やマンション購入をという動きなのでしょうか。あるいは、景気の底上げによるものなのでしょうか。

 さて今回は、住宅減税についてご紹介していきます。消費税の増税に向けて駆け込み需要があることを、見越して、消費税増税後に住宅を購入した場合により多くの減税が受けられるような手当がなされています。消費税増税前と増税後どちらに住宅取得をしたほうが有利なのかについて検討します。

◆住宅ローン減税の延長と拡充

 平成25年12月で、期限切れとなる予定だった住宅ローン減税が、平成29年末まで延長され拡充されることになりました。なお、概要は下記の通りで、適用期間は最長で10年です。

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 ところで、消費税の経過措置で、平成25年9月末までに契約をしている場合は、その不動産の引渡が平成25年4月以降でも旧税率の5%のままでよいという取扱いがあります。
 平成25年9月までに契約して、平成26年4月以降に引渡を受ければ、消費税は5%の負担で、住宅ローン減税は拡充されたものを使えるから有利と考えられますが、うまくいかない仕組みになっています。住宅ローン減税の拡充は消費税の駆け込み需要対策の性格を有するため、平成26年4月以降の取得でも旧税率で取得している場合は、平成26年3月までと同じ拡充前の取扱いとなります。

◆住宅取得等税制の延長と拡充

 住宅の取得や増改築の際にローンを利用しなかった場合は、住宅ローン減税は利用できません。しかし、一定の要件を満たす住宅の取得や増改築の場合に、税額控除が認められています。この住宅取得等税制についても、平成29年末まで延長され、拡充されることになりました。なお、平成26年4月以降の取得の場合は、認定優良住宅に加えて認定低炭素住宅の新築も対象とされることになりました。

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◆消費税増税前と増税後どっちが有利?

 消費税増税と住宅減税を考慮すると、制度的には消費税増税後に住宅減税を受けた方が有利になる場合があるようにデザインされています。例えば住宅を取得して、10年後も借入金残高が4,000万円以上残っていると仮定すれば、増税前の取得の場合は20万円×10年間で200万円の税額控除となり、増税後の取得であれば40万円×10年間で400万円の税額控除となります。仮に建物が税抜き5,000万円とした場合は、税込ベースで5,250万円が5,400万円となり、消費税の負担では150万円負担増ですが、減税で200万円負担減となり、トータルで50万円有利になります。

 ただ、現実的には、10年後に4,000万円のローン残高が残っていなければ、制度上の減税額を目一杯適用することができません。また、控除できる金額が増加したとしても、そもそもの所得税及び住民税額がそれ以上の金額でなければ、やはり減税効果を十分に享受できません。

 厳密な有利不利については、購入する不動産の金額、返済の仕方、各個人の所得控除の額に応じて変化します。住宅ローン残高が2,000万円に満たないようなら増税前の住宅取得が明らかに有利ですが、それ以外のケースは微妙な判断になります。そもそもが、消費税増税による駆け込み需要とその反動を抑制する趣旨ですから、敢えて曖昧になるような制度にしているとも考えられます。結局は、消費税の増税を意識しないで、購入できるときに購入するのがベストのように思います。

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