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2013年04月01日号 (第185)

所得拡大税制

 みなさんこんにちは、飯田聡一郎です。東京は、桜の満開宣言が史上二番目の早さで発表され、早い春の訪れです。景気も今のところは上向きな情報が流れており、経営者にとっては、少しだけ期待感がもてそうな雰囲気です。

 さて、本日は、平成25年度税制改正で導入された、所得拡大税制についてご紹介していきます。

◆所得拡大税制とは

 平成25年度税制改正で導入された、所得拡大税制とは、個人の所得水準を後押しするための政策の一環として導入されたものです。

 基準事業年度に比較して給与等支給額が5%以上増加した場合に、その増加額の10%相当額の税額控除が受けられるという内容です。ただし、法人税額の10%(中小企業は20%)が税額控除の限度額です。

 具体的な例で示せば、基準事業年度の給与等支給額が5,000万円で、それ以降の年度が5,300万なら下記のように計算を行います。

基準年度の給与等支給額 5,000万円
上記の5%の金額        250万円

 5,300万円なら、5%以上の増加になっているので、要件をクリア

 増加額である300万円の10%⇒30万円

 給与等支給額が300万円増加したことで、結果として30万円の税額控除が受けられることになります。

 ただし、いくつか、細かい点で注意が必要です。

 1つ目は、前事業年度の給与等支給額を下回らないことです。これは、基準事業年度より5%以上の増加でも、前年対比で減少の場合は、所得の拡大に繋がらないという理由です。

 2つ目は、平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を下回らないことです。例えば、給与支給総額が増えても人数が増えただけで、平均の支給額が減少していては所得の拡大に繋がらないからです。

 そして、3つ目として、役員の親族など特殊関係人を除いたところで判定を行う点です。身内の給与を増やして節税ができてしまっては、制度の趣旨に反するからです。

◆適用期間

 所得拡大税制が適用される期間は、平成25年4月1日から平成28年3月31日までに開始する各事業年度です。例えば3月決算法人であれば、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの期間が最初の適用事業年度になります。

 本制度の適用期間中、常に比較対象となる基準事業年度は、この制度の適用対象期間の最初の事業年度の前事業年度となります。上記と同様3月決算の場合は、平成24年4月1日から平成25年3月31日が基準事業年度となります。

 これから決算を迎えるような場合で、雇用を行う場合には、決算直前で雇い入れるより、新しい年度になってから雇い入れをする方が有利になりそうです。

◆狙って適用より結果として適用が理想

 さて、所得拡大税制ですが、給与等支給額の増加額に対する10%の税額控除です。この税額控除を受けるために、給与等を増加させるという使い方は現実的ではありません。
 あくまでも、結果として人件費が増加して、要件に当てはまるようなら適用するといった利用方法になると思います。
 
 一方で、適用を狙って受ける制度ではないため、うっかりと適用漏れになりがちな制度となりそうです。経営者の方も本制度の存在を気にしておいて、給与が増加した場合は。適用漏れのないように注意しましょう。

◆所得拡大税制以外の雇用強化につながる制度

 なお、平成25年度税制改正で雇用促進税制の税額控除について、税額控除の額が1人当たり20万円から40万円に拡充されています。
 また、税制ではありませんが、若者チャレンジ助成金など、雇用に伴い利用できそうな助成金があります。
 いずれの制度もハローワークへの事前の届出が必要なので、雇用の予定がある場合は、事前に税理士や社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。

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