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2012年12月20日号 (第176)

基準期間と特定期間

 みなさんこんにちは。今年も残すところ、あとわずかとなりました。衆議院の解散があったために、平成25年度税制改正大綱の公表は、年明けになってしまいました。
 少し古い話ですが、平成23年の税制改正で、消費税の免税点について取扱いが変更になっています。この点について、ご紹介していきます。何故この時期に、平成23年改正かというと、平成25年1月1日以降に開始する課税期間から適用される改正だからです。

◆基準期間と特定期間

 従来は、消費税の課税事業者に該当するか否かについて、基準期間に基づいて、判定していました。基準期間は、1年決算法人の場合であれば、前々事業年度をいいます。そして、基準期間の課税売上高が1000万円を超える場合は、課税事業者となる取扱いでした。

 平成23年改正では、まず、最初に従来通り、基準期間の課税売上高によって課税事業者となるか否かの判定を行います。この段階で、基準期間の課税売上高が1000万円を超えるような場合は、課税事業者となる点は、従来通りです。
 次に、基準期間が存在しない場合、若しくは基準期間の課税売上高が1000万円以下の場合には、特定期間の課税売上高が1000万円を超えているか否かの判定を行います。なお、特定期間とは、原則として、前事業年度の開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。この特定期間で、課税売上高が1000万円を超えている場合には、課税事業者となります。

 つまり、従来は基準期間の課税売上高のみで判定を行っていたものを、最初に基準期間で判定し、課税事業者とならなかった場合には、さらに特定期間で判定を行うという改正です。
 本改正の趣旨は、設立初年度から売上高が相当に高額となる事業者が、2年間の免税期間の恩恵を受けることをできないようにすることです。結果として設立初年度に、半年間の課税売上高が1000万円を超えるような場合は、設立2年目から課税事業者に該当するとする内容です。

 なお、基準期間がない法人が、期首資本金の額が1000万円以上なら、上記判定をするまでもなく、課税事業者となるのは従来通りです。

◆特定期間は課税売上高ではなく給与で判定することも可能

 なお、免税点制度は零細企業に配慮した法律です。そのような零細企業は、法人税の申告時期に1年分まとめて会計処理をするようなケースも実務上は考えられます。また、消費税の納税義務の判定のためだけに、半年分の会計処理を行うことは、零細企業にとっては負担が重いと考えられます。そこで、特定期間の課税売上高に替えて、特定期間の給与総額で、免税点判定を行うことも認めています。

 具体的には、特定期間の給与総額が1000万円を超えるか否かで判定することになります。感覚的には月額の給与総額が166万円を超えるか否かでの判定となり、本当にゼロから事業を始めるような場合では、給与による判定で概ね救済されるように感じます。

 なお、特定期間の課税売上高で判定を行うか、特定期間の給与総額で判定を行うかについては、納税者が選択できる制度となっています。つまり、特定期間の課税売上高が1000万円を超える場合でも、特定期間の給与が1000万円以下であれば、給与総額で判定することで免税事業者となることが可能です。
 実務上の注意点としては、特定期間の課税売上高が1000万円を超える場合でも、必ず給与額での判定も行い、有利な方の選択を失念しないことです。

◆短期事業年度と特定期間がない場合

 特定期間は法人の場合、原則として、その前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間です。しかし、前事業年度が短期事業年度に該当する場合は異なる取扱いとなります。
 前事業年度が短期事業年度に該当する場合とは、(1)前事業年度が7ヶ月以下である場合、 (2)前事業年度の開始の日以後6ヶ月の期間の末日から、前事業年度終了の日までの期間が2ヶ月未満である場合をいいます。

 仮に、前事業年度が短期事業年度に該当する場合は、その事業年度の前々事業年度の開始の日以後6ヶ月の期間を特定期間とします。この取扱いの趣旨は2つあり、1つ目は、半年決算法人の場合を想定しています。2つ目は、決算期を変更した場合や、設立2期目を想定した取扱いです。

 いずれにしても、前年が短期事業年度に該当する場合は、その前々事業年度が特定期間となる取扱いですが、設立2年目の法人などであれば、その前々事業年度が存在しないことになります。特定期間が存在しない場合には、結果として免税事業者となります。


 実務上は、設立が必ずしも1日とは限らず、また決算期が月末でないようなケースも存在します。そのような場合については、さらに細かい取扱いが用意されています。それらの内容については、次回取り上げることにします。

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